RM_horseの競馬コラム

RM_horseの競馬コラム

競馬についてあれこれ書きます。

JRAの対策は0点

 

先日、禁止薬物が含まれたサプリメントの流通問題に関するコラムを書きました。

その記事はこちらから

その翌日にJRAから本件の調査結果および再発防止対策のリリースがありました。

 

飼料添加物への禁止薬物混入に係る調査結果と改善策について JRA

 

JRAはこういうニュースを時が経てば削除する傾向にあるので、

全文引用しながら私の見解を書かせていただきます。

 

 

JRA理事長の挨拶

まずはJRA後藤理事長のコメントです。

 

≪お客様へ≫

 

6月15日(土曜)、16日(日曜)の出走予定馬の一部について禁止薬物の影響下にある可能性が否定できない状況となり、多数の馬を競走から除外し、お客様および関係者の皆様にご迷惑をおかけしたこと、また、公正な競馬を標榜するJRAとしては、係る事態で皆様にご心配をおかけしましたことについて、改めてお詫び申し上げます。

JRAでは事案発生後、販売元、小売店および薬物検査機関から聞き取りを行ってまいりましたが、その結果、販売元から、飼料添加物の製造工程において禁止薬物が混入したことを特定できたとの報告がありました。
一方で、販売前の検査を受けていない製品が流通していたことに関しましては、従前のチェック体制が十分でなかったと考えております。JRAとしては、このチェック体制を強化するとともに、販売元および小売店に対して販売前の検査を徹底するように要請したところであり、今回策定しました改善策につきましても着実に実施してまいります。

今後、このような事案を二度と起こさないよう、再発防止に向けた取組みを徹底することが、競馬主催者としてのJRAの役割、使命であると考えております。
皆様には、ご迷惑とご心配をお掛けしましたことを重ねてお詫び申し上げます。

 

2019年7月5日
日本中央競馬会
理事長 後藤正幸

 

後で詳しく書きますが、俺らのチェックも不十分だったのは認めるけど、

メーカーがやらかしたからこうなったと言いたげです。

冒頭の理事長の挨拶で、販売元や小売店へのルール徹底の要請を書く必要はないでしょう。

責任はJRAが取ればいいのです。

 

 

・経緯

まずは一連の経緯です。

 

1.経緯


○2019年6月14日(金曜)夕刻、日本農産工業株式会社(以下「農産工」という。)が、JRAファシリティーズ株式会社(以下「JRAF」という。)などの小売店に販売・納品した飼料添加物「グリーンカル」の一部の製品に、禁止薬物テオブロミンを含むことが判明しました。
○また、この「グリーンカル」は、公益財団法人 競走馬理化学研究所(以下「競理研」という。)による薬物検査の結果を待たず、小売店(JRAF、株式会社市原商店、株式会社渡邉商店、日本競馬飼糧株式会社)を通じてトレーニング・センター内に納品されていたことが判明しました。
○このため、競馬の公正性を担保する目的から、6月15日(土曜)・16日(日曜)の中央競馬において、出走予定馬のうち同製品が納品されていた厩舎の所属馬156頭を競走除外しました。

 

経緯については事実を述べているのみなので、特にありません。

 

 

・調査結果

今回の禁止薬物混入の調査結果です。

 

2.調査結果


JRAでは、販売元の農産工、小売店のJRAF、検査機関の競理研から事情の聞き取りを行いました。

 

(1)農産工からの聞き取り内容
○「グリーンカル」の原材料であるアルファルファミール(牧草粉砕品)の製造ラインと同じ建屋内にある別の製造ラインで、カカオ豆副産物が粉砕されており、この粉塵がアルファルファミールに混入した結果「グリーンカル」からテオブロミンが検出されました。
○「グリーンカル」については、農産工が独自にモニタリングと称する年に1回の薬物検査を行っていましたが、これはJRAの「検査は同一の原材料を用い、一定の期間内に一連の製造工程により均質性を有するように製造された製品(ロット)毎に実施。」という検査の考え方(「飼料添加物等の薬物検査実施要領(PDFファイル 87KB)」に明示)とは異なるものでした。
○農産工では、「産地や入手時期が異なっても原材料名が同じであれば同一のもの」とみなす考え方をしており、このため同一配合率、同一製造工程により製造された製品であれば、非連続製造であっても全て同一のロット(「グリーンカル」は常にロット番号「F」を使用)とみなしていました。


(2)競理研からの聞き取り内容
○競理研は、過去に、検査申請書に記載されたロット番号(「F」)と実際の製品に記載されたロット番号(「F+4桁の英数字」)との違いに気付き、農産工に確認したこともありましたが、農産工の「4桁の英数字は管理番号であり、両者は同一のものを指す」との説明を受け、以降、その認識で検査を行っていました。


(3)JRAFからの聞き取り内容
○JRAFは、競理研から発行された検査成績書(写)に記載されたロット番号(「F」)と実際の製品に記載されたロット番号(「F+4桁の英数字」)との違いに気付き、農産工に確認しましたが、競理研になされたものと同様の説明を受けたため、「F+4桁の英数字」が記載された製品を検査済みの認識で販売してしまいました。

 

まず、混入源が特定できたのはこのリリースで唯一評価できる点です。

しかし、別の製造ラインからのコンタミというのはかなり初歩的なミスです。

これはJRAJRAファシリティーズは同じ建屋でカカオ豆を粉砕していることは

知らなかったのでしょうか?生産ラインをしっかり見ていれば指摘もできたでしょう。

もしくは見ていないとか?ここまでずさんな対応をしてきた彼らならあり得ます。

もし見ていたとして、その後勝手に生産側がカカオ豆の粉砕を始めたとしても

生産時のルールや、重要性をきちんと伝えてこなかったのが悪いです。

 

そして検査体制に関しては契約書の内容までわからないですが、

JRAの認識と日本農産工業との認識が全く違います。

メーカーとJRAの食い違いは、ピンクブーケという馬が

薬物検査に引っかかった際も起きています。

このことは以前コラムを書きました。↓

JRA 禁止薬物摂取疑いに伴う大量除外について

同じことを何回起こすつもりなのでしょうか?

以前も生産側との擦り合わせを徹底していくと言ってましたが

何をしていたのでしょうか?

 

 

「飼料添加物等の薬物検査実施要領」に関しても、抜粋版とはいえ疑問の残る内容です。

これも削除の可能性があるので引用します。

飼料添加物等の薬物検査実施要領(抜粋)


1.検査が必要なもの
(1)禁止薬物の検出歴がある原材料(はちみつ・生薬など)および禁止薬物が含ま れる可能性がある植物(カカオ・茶など)から製造されている製品。
(2)天然以外の原材料(添加剤等)が含まれる製品。

 

2.検査が不要なもの
上記1に該当しない、天然の原材料のみからなる製品。
上記1に該当する製品については検査を実施し、陰性である旨を明記すること。

 

※検査対象品の考え方:
検査は製品のロット(1 回製造単位)毎に実施する。または、検査が必要な原材料 のロット毎の検査を実施し、陰性の原材料から製造される製品については検査陰性と 見なすことができる。同一ロットの原材料を使用する場合、製造ラインにおいて当該 飼料以外の製造が行われない限り、その期間中に製造される製品はすべて同一ロット とみなすことができる。ただし、外国製品については、同一ロット表示であっても輸 入時期が異なる場合には検査を実施する。

 

天然の原材料であれば検査が不要なのはよくわかりません。

天然物であればよりコンタミが増えるのではないですか?

食品業界にいるわけではないので、そこまでの知見がありませんが

天然だから安心!みたいな非科学的な結論かもしれないと勘ぐってしまいます。

 

検査は製品のロット毎に実施するのはいいですが、

原材料のロット毎の検査で陰性であれば、その原材料から製造された製品は

検査しなくても陰性とみなす、いうことは

今回のような外的要因のコンタミが生産時に混入してもわからないということではないですか?

このままではメーカーがルールを守っていても禁止薬物摂取が起こり得ます。

これで禁止薬物が混入した製品の流通が防げると考えているのが驚きです。

 

つまり、JRAもしくはJRAファシリティーズは受入検査をしていないのだと思います。

少しのコンタミで大ごとになるのですから、

メーカー任せにせず受入検査の体制を整えたらどうですか?

 

抜粋版なので載せていないだけかもしれませんが、

上記のような検査ルールの不備から考えても、とても品質管理の知識があるとは思えません。

JRAも、JRAファシリティーズも、まずは品質管理検定2級に

合格出来るくらいの知識をつける必要がありませんか?

バカにしすぎかもしれませんが、今回の報告を見ても知識が無いとしか思えないのです。

 

もちろん、日本農産工業の「産地や入手時期が異なっても原材料名が同じであれば同一のもの」

という考えが常識から外れすぎていることは言うまでもありません。

おそらくそれはただの言い訳で、本音はそんな考えではないでしょう。

そう解釈せざるを得なかった事情はあったとしても、不十分な管理と引き換えに

社会的信用をなくしてしまいました。

 

しかも日本農産工業はISO9001(品質マネジメントシステムの国際規格)を取得しています。

品質保証部もあるようですが、ひどいものですね。

品質 / 技術 - 日本農産工業株式会社

ISOの更新審査も受けているはずですが、なぜ通っているのかと思うくらいです。

これでは真面目に品質管理に取り組んでいる企業がバカみたいですので

今すぐISO9001は取り消しにしてもいいはずです。

(少し余談でした)

 

 

・発生原因

上の調査結果と少しかぶりますが、発生原因をまとめています。

 

3.発生要因


○農産工は、自身が販売する「グリーンカル」の原材料の製造工程においてテオブロミンを含むカカオ豆副産物の粉塵が混入したと特定。
○農産工が、ロット毎の薬物検査について、JRAの定める「飼料添加物等の薬物検査実施要領」に、結果として従っていなかったこと。
○JRAFおよび競理研は、JRAの定める「飼料添加物等の薬物検査実施要領」に適合しない製品の流通を未然に防ぐ体制を十分に整えていなかったこと。
JRAが「農産工の薬物検査受検の状況」「競理研への薬物検査申請状況」「JRAF他小売店におけるロット番号の確認状況」について、正確な情報を有する体制が十分にとれていなかったこと。
 

 

日本農産工業については発生要因に書いてある通りです。

JRAファシリティーズや競走馬理化学研究所の話も具体性は無いですが、

一言で言ってしまえばそうなります。

ただし、JRAに関しては本件のピンポイントな事例のみの要因しか書いていませんが、

なぜこうなってしまったのか全然わかってないと思います。

 

禁止薬物が混入したものを流通させないための、ガイドラインが甘々なのです。

この後の対策にも出てきませんが、全ての原因はJRAの認識の甘さと、品質管理の知識不足なのです。

考えを改めなければ、また繰り返します。

現にピンクブーケの時から5年足らずで繰り返しています。

 

 

・改善策

最も重要な今後の対策です。

 

4.改善策


(1)JRAの改善策
JRAと競理研で薬物検査申請情報を常時共有し、同一製品の過去の申請履歴・検査結果から、「長期間同一ロット番号での申請がないかどうか」「直近の検査で薬物陽性となっていないかどうか」等についてJRAが確認します。
その結果、(1)不適当なロット管理が疑われる場合については管理方法を、(2)直近の検査で薬物陽性を示した製品についてはその検査以降に行った対策を、それぞれJRAが申請者に確認し、必要に応じて改善を要請します。
○また、JRA施設内に納品しているJRAFなどの小売店に対して、最新の検査結果を反映した全製品のリストを随時提出させるとともに、JRAが小売店の店舗、倉庫等への立入り検査を通じて、提出リストと製品との照合を行います。
JRAと競理研で薬物検査結果情報を速やかに共有し、陽性となった飼料添加物等については、申請者に原因の調査と対策を要請します。
○「飼料添加物等の薬物検査実施要領」については関係者が間違った解釈をしないよう、より明確かつ理解しやすい文言に変更します。
○飼料添加物等の製造工程における禁止薬物混入リスクについて、飼料添加物等の販売元および小売店に対して、再点検を要請します。


(2)JRAF・競理研・農産工の改善策
JRAは、前記の調査結果を踏まえ、JRAF、競理研、農産工に対して以下の対応を要請します。

 

JRAFに対し
全社をあげて、飼料添加物等への禁止薬物混入の危険性、取扱い製品が公正競馬に与える影響等を強く認識し、再発防止に向けた取組みを徹底すること。
飼料添加物等の販売元からの納品時に、実際の製品と検査成績書(写)とのロット番号を確認する従来の体制に加え、厩舎への販売、納品時にも再度確認する二重チェック体制を構築すること。

 

理研に対し
薬物検査申請内容に疑義がある場合は、申請者に確認するとともに、確認内容を速やかにJRAと共有すること。
薬物検査の結果をJRAと速やかに共有し、陽性となった飼料添加物等については、JRAを通じて原因の調査と対策を要請すること。


農産工に対し
禁止薬物を含む植物等を飼料添加物等の製造ラインに近接させないなど、製品の品質管理を徹底すること。
JRAの定める「飼料添加物等の薬物検査実施要領」を遵守し、適切な検査手順で製品の販売前の検査を受検すること。
製品毎のロット番号について、同要領を遵守し、適切な番号管理を行うとともに、検査申請書および製品にその番号を記載すること。

 

 

全体的に今回の事例と全く同じことが起こらないようにしただけという印象です。

対策がピンポイントすぎるのです。

それも大事ですが、根本の本質的な部分を直さないといけないのです。

 

上記の対策は、言ってしまえば

 

「ルールをきちんと守っていればこんなことにはならなかった。チェックは定期的にしてやるからルールを守れよ。」

 

こんなJRAの姿勢が垣間見える対策です。

 

要は何も反省していないのです。

そうでなければルールそのままにチェックだけ強化する

なんてことにはなりません。

 

私の働いている業種は製造業ですので、製造業での内部事例で例えてみます。

 

従業員が機械に挟まれたという労災があった時に、

今後起こらないようにどう対策をするか?

 

上記のJRAが発表した対策に例えるなら、

・その機械を使う時には上司の了解や立会いをする。

・挟まれないための使い方を徹底する。

これしか言ってないのです。

あまりにも人に依存しすぎており、ヒューマンエラーを防げません。

 

それも必要ですが、一番大事なのは

物理的に挟まれず、なおかつ作業が面倒でない機械に新調する

ことではないでしょうか?

 

今回の事例で言えば、自前で検査体制を構築することが出来るはずです。

もちろんすぐにとは言いませんが。

 

要はお金を出せということです。

お金を出さずに対策しようというのはあり得ません。

除外になった馬には3着相当の補填をするようですが、

お金を使うならこっちも使わないといけないでしょう、とすぐに思いました。

 

あとは上記でも記したようにガイドラインを根本的に考え直さないといけません。

 

よって、JRAの対策は0点なのです。

 

引用含めて長文でしたが、お読みいただきありがとうございました。