これであなたも調教マスター! ~調教の取扱説明書~
大変お待たせしました。申し訳ありません。
いただいていたご要望の第一弾です。
今回は調教について書きます。
実は調教のことを取り上げるのは初めてではありません。
こちらも参照しつつ、本記事も読んでいただけると幸いです。
- 調教を見るときに考えておかなければいけないこと
- 調教の全体タイムの基準
- 坂路はラスト2Fだけ見ればよし!
- CWは坂路よりも全体時計重視
- 併せ馬には先着したい
- 調教の強度や鞍上に注意
- ルーティーンから外れているときは、理由を考えてみる
- まとめ ~これだけ考えても裏切られるのが調教~
調教を見るときに考えておかなければいけないこと
調教について考察する前に前提条件が結構あります。
それらをまとめておきます。
▪️坂路とCWの調教を中心に考える
大抵の場合は坂路かCW(ウッドチップコース)の調教ですので
この二つを基準に考えます。
主にCWは中長距離向け、坂路は短距離向けプラス調整に使われています。
▪️坂路だけ自動計測で、他は記者によるストップウォッチ計測
坂路はトレセンの自動計測システムから出されるタイムなので、JRAが公式に発表しているタイムとも言えます。
しかし、CW等は自動計測ではないので、記者がストップウォッチで出しているタイムです。
新聞社によって誤差もあります。1秒くらいは違うことがあると思っていていいでしょう。
「CWのタイムが0.5秒速いからこっちの調教が良い」
などという考え方は無意味なことがわかるでしょう。
また、日によっても時計の出やすさ、出にくさがあります。
レースでも馬場状態が違えばタイムが変わりますよね?調教でも同じです。
細かく言えばその日でも追い切りの時間帯によって時計が出やすい、出にくいまであるのですが・・・
考えすぎると沼にはまりますのでほどほどにですね。
▪️厩舎も馬も個性がある
調教は坂路あるいはCWでおこなうことが多数ですが、
馬によっては芝コースやポリトラック(P)コースで
追い切ることが向いている馬もいます。
また、厩舎にも個性があり、
坂路やCWをあえて使わないようにしている場合もあります。
美浦と栗東では調教コースの形が違うことも考えておかなければなりません。
坂路は以下のような違いがあります。
出典:JRA 公式HP
大きな違いは高低差です。
(これが競馬界の“西高東低”の一因とも言われています)
さらにCWもコースが違います。
坂路のようにうまく比較できるものがありませんでしたが
簡単に説明すると
と違いがあります。
なので美浦のタイムと栗東のタイムを比較することはできません。
調教の全体タイムの基準
前置きが長かったですが本題です。
まずはタイムについて考えます。
タイムが良い=調教が良いとは必ずしもなりませんが、
80%は良いと言っていいでしょう。
では、どういうタイムが出せれば優秀なのか?
わかりやすくまとめられているサイトがありましたのでご紹介します。
補足として数字の読み方を説明します。
よく調教欄にこういった数字が書いてあると思います。
CW 80.2 64.8 50.7 37.4 12.4
坂路 52.6 37.9 24.9 12.4
この数字の読み方が分からずに調教はいいやと思っている人が多いと思います。
1番左は全体タイムを表しています。
CWを80.2秒、坂路を52.6秒で走っているということです。
じゃあその右の数字の羅列は何か?
これはラップタイムなのです。
CWは左から全体タイム(6F)→残り5F→残り4F→残り3F→残り1Fの走破タイム
を表しています。
※CWはラップタイムが6つだったり、4つだったりすることもあります。
坂路は全体タイム(4F)→3F→2F→1Fですね。
ここからは私の感覚で記します。
坂路で53秒中盤が出せれば未勝利は脱出できる可能性が高いです。
重賞を勝つ馬ならほぼ馬なりで53〜54秒くらいは出せるでしょう。
スプリンターであれば坂路で51秒台が出せてやっと重賞への挑戦権が得られる感じです。
トップスプリンターなら50秒台を軽く出してきます。
例えばモズスーパーフレアは48秒台を出したことがあります。
そりゃG1勝ちますよというタイムですよね。
CWなら6F 83秒台、5F 67秒台が一つの基準になります。
これくらいで走れていれば調整は順調だなと見れます。
軽々と80〜81秒台が出せるなら重賞でも通用するだけのポテンシャルはあるでしょうし、
6Fで80秒を切るようなタイムは滅多に見かけないです。G1でも上位人気ではないでしょうか?
ただ、重要なのは全体タイムだけではありません。
坂路はラスト2Fだけ見ればよし!
全体タイムだけ見ていればいいのではありません。
ラスト2Fおよび1Fのタイムが超重要です。
むしろ、坂路なら全体タイムはそんなに気にしなくていいでしょう。
いや、むしろ坂路はラスト2Fだけ見てくれ!と言いたいです。
これは私の独自理論ではなく、競馬評論家(予想家?)の鈴木ショータ氏が度々口にしています。
私も前々から坂路の全体タイムはさほど重要ではないと感じており、考えが同じだったのでパクらせて頂いています(笑)
(馬券以外で金儲けは一切していないのでご容赦ください)
例えば、全体タイムが55秒や56秒かかっていたとしても、ラスト2Fで加速ラップかつ12秒前半とかであれば評価は高いです。
これは私の考え方なので正しいかどうかはわかりませんが、
いくら坂路の4Fのタイムが良くても、ラスト1Fで失速しているようでは全く評価できません。
たかが調教、されど調教です。
調教でも最後に垂れるようなら、レースで最後まで踏ん張れるとは思えません。
前述のように調教で動く馬、動かない馬は個性によります。
しかし、いくら調教が軽めだとしても、坂路でラスト2Fで垂れているようなら私は買いません。
CWは坂路よりも全体時計重視
CWは坂路よりも全体時計を重視しています。
もちろん、坂路と同様に最後に垂れるようでは評価はできません。
しかし、CWは終い重点(最初は折り合いを重視してゆったりと進めて、後半に追い出す)の調教が多いので、あまり最後に垂れる調教にはなりません。
終い重点になりがちだからこそ、全体時計は重視すべきだと考えています。
併せ馬や調教の強度、フォームによりけりではありますが、
6F 85~87秒でラスト1F11秒台の調教よりも、6F 81~83秒でラスト1F 12秒中盤の調教の方が私は評価しますね。
さすがにラスト1Fが13秒台だと評価しにくいですが、12秒台中盤くらいで走れていればいいのかなと思います。
ゆったり走る調教が一概に良くないとは思いませんが、
CW追いは「折り合いとスピードの両立」を確認するものだと思っているので、
折り合いばっかり重視していてもレースに勝てるわけではありません。
なのでCWは全体時計も重視します。
(※ただし、CWは前述の通り記者がストップウォッチで計測しているので、タイムの絶対値の比較の際は考慮する)
併せ馬には先着したい
そして調教といえば併せ馬。
2頭あるいは3頭が並んで走ることでタイムが出やすくなったり闘争心を掻き立てる、
あるいはその逆で折り合いを強化する効果があるとされています。
CWの場合は先行する馬を追いかけて、最終的には並んだり抜かしたりする調教もしばしばあります。
併せ馬の場合、どちらが先着するかが明らかですので、併走馬と優劣が付きます。
2頭が並んで調教が終わる併入でも、手応えの差で優劣が見えてきます。
併せ馬は先着する方がいいに決まっています。
そりゃそうです。併走馬に遅れてしまった場合、マイナス面になることはあっても、遅れたことがプラスということはないですからね。
ただし、「相手の動きが良いために遅れてしまったけれど、調教は良かった」
と言われるパターンがあります。
確かにそういうこともあります。併せ馬に遅れていたのに重賞を勝った馬もいました。
しかし、確率はかなり低いです。
やはり、併せ馬にはきっちり先着あるいは併入で手応えが勝っていないと厳しいでしょう。
私は「好タイムだが併せ馬遅れ」と「時計は平凡だが併せ馬に先着」なら、間違いなく後者の馬を評価します。
ただし、併走馬の格は気にします。
古馬重賞の調教で2歳未勝利馬と調教して先着していても、
「レベルの低い馬が相手じゃないと先着できない状態なのかな?」
と考えます。
逆に新馬・未勝利戦や1勝クラスの調教で、相手が格上なのに先着していたり、食い下がっていたら当然高評価です。
調教の強度や鞍上に注意
新聞の調教欄を見ると、馬なり、強め、一杯と書いてあると思います。
これは鞍上の追い方の強さを表しています。
ただ、追い方はその時によって様々ですし、記者の主観も入るので
こっちの新聞では強め表記だけれど、こちらの新聞では一杯ということもあります。
また、ずっと追っているパターンもあれば、
前半馬なりで後半から追うパターンもあります。
重要なのは、同じ調教タイムでもほぼ馬なりで出したものと
ムチまで入れて一杯に追った時に出したものでは全然違うことに注意です。
そして、鞍上も様々です。
新聞の調教欄には鞍上が書いてあります。
騎手の個人名の他に、助手、調教師、騎手候補生などが書いてあるでしょう。鞍上で調教タイムも変わります。
ここで問題です。騎手、調教助手(および調教師)、騎手候補生の中でタイムが速くなるのは誰でしょう?
答えは騎手候補生です。なぜなら体重が軽いからです。
このように調教の状況にも留意しなければなりません。
ルーティーンから外れているときは、理由を考えてみる
ここまで色々書いてきましたが、一番重要なのは
いつもと調教過程が違うかどうか、かもしれません。
つまり、ルーティーンから外れているのかどうかです。
好調を維持している馬なら、これまでの調教パターンで問題ないはずです。
今までと違うなら、どういう意図なのか考えてみると良いでしょう。
いつもはCW追いしている馬が、今回は短い距離を使うから坂路で、とか
逆に坂路中心で調整している馬が、今回は距離延長なので
折り合いを訓練するために長めのCWで調教しているとか。
併せ馬/単走の違いも理由があるはずです。
そういう調教の意図が見えてくると面白いと思います。
逆に成績がふるわない馬は、いつも通りの調教をしていては状況を打破できません。
いつもより調教タイムが良い、坂路でも垂れなくなってきた、併せ馬にも軽く先着した、など
良化の兆候を見つけることができるかもしれません。
それが穴馬発見のチャンスです。
まとめ ~これだけ考えても裏切られるのが調教~
以上、調教で考えなければいけないことを一通り書いてみました。
しかし、これだけのことを考えても、平気でレースで裏切られます。
調教が抜群と思った馬が見せ場なく凡走したり、調教から絶不調と判断した馬が快勝することもよくあります。
それでも調教の見方は知っていて損はないと思います。
今回書いたのは私なりの調教予想の仕方なので、答えではありません。
100人いれば100通りの調教予想があるはずです。
調教を用いた予想に興味がある方に、参考にしていただければ幸いです。