じゃい氏の主張には同意だが、裁判の寄付を募るのは疑問
ちょっと前の話題になってしまいますが、芸人のじゃいさんが馬券の利益に対する追徴課税を請求され、騒動になっています。
これについての考えをまとめました。
騒動の経緯
経緯は以下の通りです。
- じゃい氏は自身のYouTubeチャンネルで、2020年末に数千万円の超高額馬券を的中させたことを発信しています。
- その後、じゃい氏の自宅に税務署員が来て、じゃい氏の通帳等を調査しました。
- 税金はきちんと納めている認識であったが、周りのアドバイスもあり雑所得で計上していた。
- 結果としては雑所得ではなく一時所得「マンションを買えるくらいの請求」が来たそうです。
- 裁判を考えたが、長期間になってしまい、費用も嵩むために一度は断念し、お子さんの将来のための貯蓄から支払ったそうです。
- 上記の件や自身の考え(競馬の税制のあるべき論)をYouTubeチャンネルで発信しました。
- 様々な意見を見て、競馬の税制度を変えるために立ち上がることを決意し、寄付を募ります。
- 寄付は不服申し立てをしたことによる弁護士費用、税理士費用に充てるとのことです。
ということです。
追徴課税をくらった1番の要因は、雑所得と判断していたことでしょう。
馬券収入が基本的に一時所得になってしまうことは、ある程度馬券を買っている人間であれば常識です。
雑所得になる場合は「業として」の収入でなければなりません。
馬券における雑所得と一時所得の大きな違いは、外れ馬券を計上するかどうかです。
例えば下記2つの馬券を買ったケースを考えてみましょう。
①単勝2倍の馬に1点100万円だけを賭けて的中した場合。
②一方で1万通りのWIN5を購入し(1点100円なので、購入費用は100万円)、的中したときの払い戻しが200万円だった場合。
この2つのケース、どちらも馬券収支としてはプラス100万円ですが、税金の考え方は違います。
馬券は基本的には一時所得なので、以下の課税対象の考え方になります。
①単勝のケースでは、的中した200万円から、的中馬券の購入費用100万円を控除した100万円を課税対象にします。
②WIN5のケースでは、的中した200万円から、的中馬券の購入費用100円を控除した199万9900円を課税対象にします。
つまり同じ税率ならWIN5のケースでは約2倍の税金が持っていかれてしまうのです。
WIN5で的中しなかった9999通りの購入費用は無視され、さも100円が200万円になったかのように課税されてしまうのです。
ちなみに、雑所得である場合はどちらも100万円を課税対象にします。一般的な感覚ではこっちですよね。
「基本的に」一時所得と書いたのは、ごく一部の例外があります。
「卍氏」という人の裁判では、ソフトによる自動投票ツールを利用して機械的に購入していたことが「業」であると認められたため、雑所得と認定されたことがあります。
ただし、そんな買い方をしている人はほぼいませんので、一般的に予想しながら馬券を買っている人は一時所得と認定されます。
じゃい氏は様々なメディアを通して予想や馬券購入をしていたので、馬券購入は「業」と考えていたようですが、税務署は一時所得と判断しました。
税務署の判断は、現行の税制度や過去の判例を考えれば妥当なものではあります。
しかし、その税制度には問題点が多くあります。
現行の税制度の問題点① 馬券収支マイナスでも課税
現状の税制度での問題点はいくつかあり、まず1つ目は馬券が当たった時の払戻をうかつに使うことは出来ないことです。
馬券を楽しむ人には、馬券が当たって払い戻された金額を使って、次のレースを購入することがよくあると思います。
そして勝ったり負けたりしながら楽しむもので、回収率100%超え(プラスにすること)を目指しています。
しかし、税金のことを考えれば、「馬券が当たったから次のレース買おう」は難しくなります。
極端な話、年間でトータル200万円馬券を購入し、払戻が100万円だったとしても課税対象です。
これはもう意味がわかりませんが、現行の税制度ではウソのようなホントの話なのです。
現行の税制度の問題点② 年間50万円から課税対象になるのはハードルが低すぎる
2つ目は課税対象のハードルの低さです。
現行の制度では、年間50万円から課税対象になります。
これはあまりにも少なすぎます。
年間50万円は月42,000円、週10,000円強で達してしまいます。
万馬券が週1回ペースで的中すると課税対象です。
そんな小さなところから税金取ってどうするの?処理にかかる人件費の方が高いのでは?と思います。
現行の税制度の問題点③ 目立つ人、申告する人だけ徴収する不公平感
課税対象者が全員しっかりと納税していればまだしも、そうではありません。
むしろしっかり払っている人なんてごくわずかでしょうし、年間50万円〜100万円くらいのレンジの人で申告している人なんてほぼゼロです。
払っているのはじゃい氏のように的中したことを公表している人か、超高額払い戻しにより生活が変わって脱税がバレた人くらいでしょう。
特に競馬場やWINSで購入した馬券の払い戻しは、現金なのでバレようもありません。
払った人からすれば、「なんで俺だけ」となるのは当然です。
裁判は自分のお金でやれ
以上のように現行の馬券収入に関する税制度は問題と思っていますし、その制度を変えたいというじゃい氏の主張には同意です。
しかし、じゃい氏は制度を変えるための手段として不服申し立てを請求し、必要な弁護士・税理士の費用の寄付を募っています。
これにはかなり違和感があります。
目的は払った税金の奪還ではないにしても、この不服申し立てで得られる明確なアウトプットは追徴課税分のお金です。
(もし追徴課税を取り戻せた場合、その判例が今後に生きてくるのだと思います)
よって本人の意図がどうであれ、彼は他人のお金を使って税金を取り戻そうとしていることになります。
それは道義として自分のお金でやるべきでしょう。
寄付を一人当たり最大1,000円としているのは、金額よりも多くの人が支持していることを示したいと話していましたが、それなら署名活動をすればいいのです。
そもそも、雑所得とせずに一時所得で申告していればこんな事態にはなっていません。
自分勝手な解釈で困ったから騒いでいるわけです。
自分で蒔いた種です。自分のケツは自分で拭くべきです。
彼の主張には同意しますが、彼がやっている行動には全く賛同できません。