RM_horseの競馬コラム

RM_horseの競馬コラム

競馬についてあれこれ書きます。

大塚海渡騎手、木村哲也調教師を提訴

 

JRAの大塚海渡騎手が、所属厩舎の木村哲也調教師を提訴しました。

暴行、暴言のパワハラによる精神的苦痛を負ったとして

850万円の損害賠償請求をするものです。

 

木村師謝罪拒否、大塚騎手に手を出したのは教育目的|極ウマ・プレミアム

 

1年前の落馬事故以降、ほとんど音沙汰が無かった大塚騎手ですが

まさかこんな形で近況が明らかになるとは思いませんでした。

 

第一回口頭弁論はこれからなので詳細が不明なところはありますが

現時点での感想を書かせていただきます。

 

 

トレセンに出入りしているマスコミはだんまり

今回のニュース、各社提訴の事実報じてはいますが、

普段トレセンに出入りしていて実情に詳しいはずの人たちは

だんまりを決め込んでいます。

栗東担当の人は詳しくないはずなので仕方なしで、

 美浦担当でも詳しくない人もいるだろうが)

 

普段SNS競馬ファンのマナー違反やモラルに反する事象に対しては

ここぞとばかりに苦言を呈するトラックマンが

本件に関しては関わりたくないと言わんばかりにスルー。

 

わかりますよ。変なこと書いて出禁にでもなったら仕事にならないですよね。

じゃあ自分に影響がない人たちにだけ正義面して噛み付くのはやめろよ、

ということです。

 

JRAのコメントと同様に捜査中なのでコメントしないというスタンスも

マスコミに関しては通用しません。

新聞社は自分の利害関係がない事件に関しては捜査中など関係なく

記事にしまくっているのですから、その理屈を本件だけに持ち込むのは

ダブルスタンダードもいいところです。

 

そもそも実情を美浦担当のトレセンに出入りしている記者が

誰も知らないわけがないのですよ。

私は読んでおりませんでしたが、競馬の天才という雑誌で

名前は伏せながらも記事になっていたそうです。

 

雑誌に書かれている内容が全て事実なのかはわかりませんが、

パワハラの事象があったことを提訴が公表される前に報じているのですから、

事象自体が事実無根ということはないでしょう。

 

競馬の天才の編集者よりも関係者に近い記者はたくさんいたはずです。

担当記者が誰も知らなかったというのはあり得ないです。

その人たちが本件をスルーするのならば

ジャーナリズムの社会的意義を一切語るんじゃないよと感じます。

 

 

・スポーツ界に未だ残る暴力、暴言による指導

私が子供の頃(1990年代)、学業や部活動等における鉄拳制裁は

既に世間から疑問を持たれていました。

どんな学校でも先生、指導者、先輩から殴られて当たり前というのは

おそらく1970年代くらいではないでしょうか?

もう半世紀も前のことです。

 

しかしスポーツ強豪校においてはまだまだ鉄拳制裁が根強い時代でした。

殴ったら犯罪だよねという至極真っ当な意見に対して

子供は言ってもわからないから殴ってわからせる

という過激な考え方も一定数の支持を受けていた印象があります。

 

また、これは今でも一部あるのだと思いますが

体罰でも愛情があるかないかで全く違うという謎理論をよく聞きました。

愛情があるなら心身を傷つける暴力には発展しないはずですが。

 

スポーツ界の一部には、こうした暴力や暴言が未だに残っています。

今回も元騎手の藤田伸二氏と瀧川寿希也氏が

「大した話ではない」という旨のツイートをしています。

特に競馬界は暴力、暴言を排除する方向に

向かっていないことが表れていると思います。

 

昔よりは肯定する人の割合が減ったとは思いますが、

時代だから仕方なくという考えが大きいように感じます。

そもそも、暴力は犯罪なので時代に関係なくダメです。

暴言も内容次第では侮辱罪になります。

 

指導の一環だとこれらを許してしまうのは

恨みを持たれた奴は殺されても仕方ないと

殺人を容認するのと変わりません。

 

容認する人も、時代だからと考える人も、犯罪であるにもかかわらず

暴言、暴力が指導として悪いと思っていないのが透けて見えます。

 

なぜ指導に暴力や暴言が使われるか。

それは指導側の管理が楽になるからです。

恐怖で絶対服従をさせてしまえば、

自分の言うことを逆らわれることなく聞いてくれるので非常に楽なのです。

そうすると良いプレー、仕事をしようではなく、

叱られないためのプレー、仕事をしようという思考になっていきます。

さらに自分で臨機応変に考える能力も欠落していきます。

 

よく、暴力や暴言によって緊張感が生まれるという

趣旨の主張も見ますが、それも間違いです。

生まれるのは萎縮であり、ミスの確率は上がります。

詳細は下のフェーズ理論を参照ください。↓

Wikipedia;フェーズ理論

 

本来はきちんと説明が出来る指導者が優秀と言えます。

いわゆるスパルタ式指導を受けて大成した人物もいますが、

そういう指導者でなければもっと優秀な成績を残せたかもしれない

と考えるべきではないでしょうか?

 

仮に法的に暴力、暴言を指導に使うことが許されていても、

いい指導方法ではないと断言できます。

 

暴力・暴言の唯一のデメリットは犯罪であるから警察に捕まる、

あるいは今回のように訴えられた時に負けることですが

先生と生徒、指導者と選手、上司と部下といった関係には

警察がなかなか介入してこない歴史があり、

先の藤田氏のツイートのように、その後の状況が好転しにくいという

空気感が作られていることが多いです。

 

しかし、近年は警察も介入してきますし、

コンプライアンスの遵守が叫ばれて久しいです。

指導者が無法地帯のように振る舞える時代は終わったのです。

犯罪者には相応の罰を受けてもらうことになります。

 

 

・大塚騎手の騎乗技術と本件は無関係

今回の提訴で、大塚騎手の騎乗技術が未熟だから

厳しい指導になってしまった結果ではないかという意見も多かったです。

 

確かに大塚騎手の騎乗技術は低いと言わざるを得ません。

1年前の落馬も、直線で馬が外(左)にヨレているのに、

右ムチを連打して前の馬に接触して落馬してのもので、

他の騎手は絶対にやらないような騎乗です。

よく競馬学校を卒業できたなとすら思えるくらいでした。

 

しかし、前述の通り暴力や暴言は犯罪なので

いくら騎乗技術が未熟であろうとも関係ありません。

 

競馬は命がかかっているから仕方ないという意見もおかしいです。

暴力や暴言は直接的に騎乗技術の向上につながりません。

むしろ萎縮によって騎乗技術は頭打ちする可能性すらあります。

騎乗技術を上げたいなら、別の方法があるでしょう。

 

今回の件は、暴力や暴言が全くの事実無根であるケース以外は、

木村哲也調教師を擁護できる要素はないのです。

 

 

 

現段階では本件に関して思うところはこんなところです。