RM_horseの競馬コラム

RM_horseの競馬コラム

競馬についてあれこれ書きます。

史上初の無敗の三冠牝馬 〜デアリングタクト〜

 

今年の3歳クラシックはとんでもない年になりましたね。

 

まずは10/18の秋華賞デアリングタクトが制して牝馬初の無敗の三冠を達成。

 

そして翌週10/25の菊花賞コントレイルが制して、

こちらも無敗の三冠を達成しました。

シンボリルドルフディープインパクトに続いて3頭目

 

同じ年に牡馬牝馬ともに三冠馬が誕生するのは史上初。

さらにどちらも無敗とは・・・

生きているうちにはもう見られない光景かもしれません。

 

今回は偉大な二頭を称え、褒めに褒めちぎり

言われなき批判、懐疑的見解に真っ向から反論し、

今後の展望を書くコラムとなります。

 

まずはデアリングタクトについて書きます。

 

 

・デアリングタクトの軌跡

デアリングタクトのこれまでの経歴を振り返ります。

 

デアリングタクトのデビュー戦は2019年11月16日。

京都競馬場の芝1600mで行われた2歳新馬戦でした。

直線でも馬群の中で決してスムーズではありませんでしたが、

外に出して前が開くと、一気に急加速して突き抜けました。

上がりは最速だったものの、全力で走ったのは

最後の150mくらいなので34.8と目立つ数字ではなく、

2着馬との着差も1馬身半とそこそこなので

この時点ではあまり注目はされていませんでした。

 

続く2戦目に2020年2月8日のエルフィンSを選択。

デビュー戦と同じ京都1600mの3歳オープンです。

過去にはウオッカレッドディザイアといった馬が

エルフィンSを勝っていますが、近年では出世レースとは言い難く、

桜花賞オークスといったクラシックには繋がる馬が出てきていません

 

さらにデアリングタクトはそんなレースでも3番人気でした。

新馬戦はよく見ると急加速に非凡なものを感じさせていましたが、

タイムや上がり3Fのタイムだけ見ると目立たないため、

(結果論ではあるが)その後の活躍を考えれば人気も上がりませんでした。

 

しかしこのレースで圧巻のパフォーマンスを発揮します。

後方から追走したデアリングタクトは、直線で大外を回して一気に加速。

まるでディープインパクトのように一網打尽にして2着馬に4馬身差の圧勝

勝ちタイムの1分33秒6はウオッカの勝ちタイムを上回り、

2020年の京都1回開催の芝1600mの最速タイムでした(古馬込み)。

この勝ち方で一気に桜花賞での注目馬となります。

陣営はチューリップ賞クイーンC桜花賞トライアルは使わず、

桜花賞に直行することにしました。

 

そして桜花賞エルフィンSインパクトが強く、

2歳女王レシステンシアに次ぐ2番人気に支持されます。

しかし、差し追い込み馬には厳しい重馬場のコンディション。

さらにレース直前から雨が強くなり、

重馬場発表も不良馬場に近い状態になっていました。

 

このようにデアリングタクトには向かい風が吹いていましたが、

そんなことは関係ありませんでした。

エルフィンSと同じように後方からレースを進め、直線では外に出すと

他の後方勢が伸びない中、1頭だけ猛然と追い込んできました。

そして、先行逃げ切りをはかるレシステンシアをゴール前で捕らえて1着。

見事に一冠目を手にします。

桜花賞をキャリア3戦目で制したのは40年ぶり史上3頭目でした。

 

続く二冠目のオークス

テンションが上がりやすいと陣営はコメントしており、

初の関東遠征の不安は一部から囁かれましたが

人気はかぶりまくり単勝1.6倍。

 

レースでは過去2走と同様に後方から追走します。

直線では前を行く馬が横に広がり、鞍上の松山騎手は

進路確保に苦労します。

一度は外に出そうとするも進路がないと判断し、

内に切り替えるロスがありました。

 

それでも残り300mくらいで前が開くと一気に加速し、

前を行くウインマリリン、ウインマイティーをかわして勝利。

展開に恵まれないながらも無敗で二冠目を手にします。

無敗の二冠馬は63年ぶり史上2頭目でした。

 

夏は放牧に出て、放牧中の8月末時点で

トライアルレースは使わず、三冠目の秋華賞に直行することを発表します。

 

そして史上初の無敗の三冠牝馬がかかった秋華賞

馬体は成長し、前走のオークスからプラス14kgでレースに臨みます。

最大のライバルになり得る桜花賞、NHKマイルC2着の

レシステンシアが怪我で間に合わなかったため、デアリングタクト1強ムードであり、

当然人気も集中し、単勝は1.4倍とオークスよりも人気がかぶりました。

 

桜花賞の極悪馬場もこなしているため、馬場も含め不安が無いと思われましたが、

無敗の三冠牝馬の道はそんなに簡単なものではありませんでした。

デアリングタクトはパドックからテンションが上がりすぎて大量の発汗

馬場入場も後出しになるほどでした。

レース後に管理する杉山調教師が

「正直やばいんじゃないかと思った」

と語っていました。

 

そしてレースはスタート。立ち遅れていつも通り後方からの競馬になります。

オークスで進路取りに苦しんだ経験から、

松山騎手は3,4コーナーから徐々に進出を開始します。

直線を向いたときには前に馬がおらず、

馬場も走りやすいところという完璧な進路でした。

残り200mで内で粘る先行馬をかわして先頭に立つと、

内で併せてきた2着馬も残り100〜50mでは完全に振り切って勝利。

史上初の無敗の三冠馬となりました。

 

 

・デアリングタクトはベストじゃなくても勝つ

デアリングタクトの三冠で、最も苦労したのは秋華賞でした。

他馬という意味のライバルは不在でしたが、

テンションが上がりすぎた自分との戦いでした。

レース後は腹から直接汗の滴がしたたり落ちるほど発汗しており、

また、3,4コーナーを回るときに左手前で回ってしまい、

直線での手前変更にも苦労していました。

それでも勝ってしまうのだから怪物だと感じました。

 

無敗での牝馬三冠は史上初ですが、

牝馬三冠自体は2010年のアパパネからの11年で4頭目であり

強い馬ならわりと牝馬三冠にはなっているのが実情です。

牡馬は2010年からの11年でオルフェーヴルとコントレイルの2頭ですので、

牝馬が牡馬に比べて3歳時点での完成度や実力で

差が付きやすいのだと考えています。

 

しかし、牝馬で無敗の三冠はこれまでありませんでした。

歴史的名馬のジェンティルドンナもアーモンドアイも

三冠達成までに負けがついたことがありました。

これは牝馬は特にコンディション維持が難しいこと、

そして自分の向いている条件以外は走りにくいこと、

のあらわれではないでしょうか?

 

デアリングタクトは三冠レース全てにおいて、

展開や状態が追い風になったことは一度もありませんでした。

桜花賞では差し追い込みには絶望的な馬場で

オークスでは直線で進路取りに苦労し、

秋華賞ではテンションで苦しみました。

それでも最終的には勝っています。

 

そこがデアリングタクトの最大の強みだと思っています。

向かない条件があってもきちんと対応して最後は勝つ。

勝負根性もあるのでしょう。

テンションが上がりながらも賢さも兼ね備えているのでしょう。

アーモンドアイのような派手な勝ち方ではありませんでしたが

桜花賞は派手かもしれないが)

様々な環境要因や運に頼らずとも三冠を達成したことに価値があります。

 

 

・レイパパレが出ていたら、はナンセンス

秋華賞後に多くの声があったのは

「抽選で除外のレイパパレが出ていたら、デアリングタクトの三冠はなかった」

という説です。

 

そもそも賞金順で抽選になり除外になったことが悪いので

そのタラレバはしてもしょうがありません。

2歳や春に賞金を加算するのも実力であり、無視してはいけない要素です。

さらに春以降に成長した馬に対しても、トライアルが2レースも設定されており、

3着以内にさえ入れば優先出走権が得られます。

春に活躍も出来ず、トライアルも避けないと本番で勝負できないのも

実力不足の一部分だと考えています。

 

なぜレイパパレが出走していたら、と言われるのか?

それは秋華賞を除外されたレイパパレは

同日の京都10R、3勝クラスの大原Sに出走して圧勝したためでしょう。

この日の京都競馬場稍重で時計がかかる馬場でしたが、

レイパパレのタイムは優秀で、1800mを1分46秒3で駆け抜けました。

秋華賞の勝ちタイムは2分0秒6ですから、

単純計算でレイパパレの1800m走破タイムに12〜13秒を加算しても

秋華賞の勝ちタイムを上回っている、という理論のようです。

 

これは単純に計算しすぎです。

まず、京都1800mは半周コースですが、秋華賞の2000mは1周コース。

有料サービスのJRA-VANのデータであるため、詳細は載せませんが

京都芝1800mの重賞での水準タイムと2000mでの水準タイムとでは

13秒以上違います。

 

それでもレイパパレの走破タイムに14秒足しても

まだ秋華賞よりタイムが速いとなるでしょうが

大原Sのレイパパレは斤量52kgでした。

一方、秋華賞定量55kgです。

斤量によるタイム差は諸説ありますが、

一般的な(個人的には当てはまらないと思うが)

1kg=1馬身=0.2秒としても0.6秒は遅くなります。

 

さらに、レイパパレは逃げ切り勝ちでしたが

道中で他馬に絡まれることなくマイペースで走れています。

確かに2,3着は追い込みなのでレベルは高いですが

G1のフルゲートで重賞2勝馬マルターズディオサもいる中、

同じようにマイペースで逃げれていたかは疑問です。

 

レイパパレも3勝クラスを圧勝したので

重賞級の実力があるのは間違いないなく、

抽選を通過して秋華賞に出走していれば

デアリングタクトといい勝負が出来ていた可能性はありますが

三冠を阻止できていただろうとまで言い切るのはおかしいです。

さすがにデアリングタクトを舐めすぎです。

 

 

・今後の展望は掴みにくい

デアリングタクトの今後ですが、上記のように三冠では悪条件が重なったことで、

最も向いている条件が掴めていない面はあります。

どのコース、馬場がベストなのかもしっかりとはわかりませんので、

エルフィンSの高パフォーマンスから、良馬場のキレ勝負は得意そうですが)

次のレースは今後のレース方針の分岐点になると思います。

 

次走はジャパンカップとのこと。

ここで折り合いを欠いてイマイチなら、

来年以降は1600〜2000mに舵を取ると思いますし、

好走するなら有馬記念の出走も視野に入れつつ、

2400m前後を使っていくことになるでしょう(2000mも含む)。

特に有馬記念にもし出走して、好走しようものなら

天皇賞・春も視野に入ってくると思います。

どんな走りを見せてくれるのか楽しみです。

 

無敗の三冠馬の時点で既に名馬なのですが、

歴史的名馬と言えるジェンティルドンナやアーモンドアイの実績に

迫る、もしくは追い抜くことができるか?

非常に楽しみです。