RM_horseの競馬コラム

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競馬についてあれこれ書きます。

日本人騎手は下手なのか? 〜矢作調教師の問題発言〜

 

宝塚記念リスグラシューの勝利の後、

管理する矢作調教師はBS11での競馬中継のインタビューで

鞍上のレーン騎手を絶賛し、

「日本人騎手にはあの乗り方は出来ない」

といった旨の発言をしたようです。

 

非常に問題のある発言だと思います。

ちょっと許せなかったのでコラムにさせていただきます。

 

 

 

・なぜ発言に問題があるか?

この発言の問題点をまとめます。

 

  • レーン騎手を褒めるために、日本人騎手を下げる必要はない。

素直にレーン騎手は好騎乗だったと言えばいい話なんです。

日本人騎手どうこう言わなくていいのです。

競馬ファンが居酒屋で言うような話を公共の電波を通じて言ってしまっています。

 

 

  • この発言により、日本人騎手へのバッシングが助長しかねない。

JRAで免許を持っているルメール騎手、デムーロ騎手、

短期免許でやってくるレーン騎手やモレイラ騎手やムーア騎手など

現在、外国人騎手の活躍は著しいものがあります。

たしかに彼らの技術は素晴らしく、上位の技術を持っているのだと思います。

(私は騎乗技術に関してど素人なので想像ですが)

ファンも馬券に絡む確率が高いからとこぞって買います。

褒める分には何の問題もありませんが、

条件が違うレースを比べて根拠なく日本人騎手を批判する声を耳にしたことがあります。

 

今回で言えばリスグラシューはかつて武豊騎手が乗っていたので

ユタカであれば勝てなかったなどといったことです。

そんなの実際に今乗ってないので比べようがありません。

以前と今では馬が違うでしょうし、

武豊騎手が乗っていた頃はマイルを中心に出走していました。

 

今回、矢作調教師が冒頭の発言をしたことにより、

日本人騎手に対してのヤジ、ブーイングが助長しかねません。

何故か騎手は結果に対して批判を浴びやすいです。

これは勝ち負けによる競馬ファンの声だけでなく、

馬の悪癖による斜行で騎手に過失がなくても、

騎手が制裁を受けるケースもしばしば見られます。

 

むしろ馬を管理するのは調教師なので、批判の矛先が向いてもおかしくないのですが

調教師があからさまに責められるケースは稀です。

 

つまり矢作調教師は比較的安全な場所から、

心ない競馬ファンの援護射撃をしたと言ってもいいでしょう。

 

 

  • 自分の仕事ぶりを棚に上げている。

そして矢作調教師に言いたいのは

「お前が言うな」

です。

 

はっきり言って今のG1はノーザンファーム天栄およびしがらきの

外厩調整(というよりも仕上げ)によって結果が出ているケースが多数です。

厩舎はレースの2,3週間前くらいに帰厩してきた馬を最後に微調整するだけです。

※乱暴な言い方ではありますが、厩舎で1から仕上げてないだろうということです。

 

もちろん馬房に限りがあり、放牧して回していかないと

やってられないことも理解しています。

しかし、厩舎調整よりも外で調整した方がいいと馬主サイドから認識されているので

外厩調整が流行している面もあるのではないですか?

 

冒頭の矢作調教師の発言を、売り言葉に買い言葉で返すなら

「最近の厩舎はG1を勝てる仕上がりには出来ない」

となりますよ。

 

例えば騎手からそう言われて何も思いませんか?

それと同じことを矢作調教師はテレビで発言したのです。

 

 

 

・日本人騎手は下手なのか?

そしてエントリータイトルにもある日本人騎手は下手なのかどうかですが、

私は馬乗りの技術に関しては素人なので、具体的には明言できませんが

決してそんなことは無いと思います。

 

以前、武豊騎手は「外国人騎手が上手いのではなく、日本に来る外国人騎手が上手い」

と発言していました。

これは短期免許を取得できる条件が、所属国での成績が上位でなければならない

という制度の話が関係しています。

 

JRAは1年中競馬を開催していますが、おそらく世界的には珍しいほうで

オフシーズンに各国のトップクラスの騎手たちが押し寄せます。

賞金も高いですし、何よりも差別なく有力馬に乗せてくれます。

これにより世界選抜戦といった様相になっています。

オールスター戦で押されてしまうのは無理もありません。

 

例えば武豊騎手、川田騎手、福永騎手、戸崎騎手あたりは

外国人騎手と遜色ないか、上回る成績となることもありますが、

海外からはそのクラスの騎手が短期免許を取得してくるのです。

平均値として好成績になるのは当然です。

プロ野球選手が全員大谷翔平になることは無理なように

日本人騎手が皆武豊ばりの実力を持つことは出来ません。

ある程度はこれからも外国人騎手が勝っていくことでしょう。

 

あとは積極性や判断の柔軟性が足りないという人もいますが

そうしたのは歴史的に結果論で騎手を咎めていった

馬主、調教師、マスコミ、ファンにあると思います。

 

例えば松山騎手はアルアインに乗って皐月賞を勝ちましたが、

ダービーで5着以降乗せてもらえませんし、評価も上がってきません。

ところがレーン騎手は断然人気のサートゥルナーリアをダービーで4着に敗れましたが

他の有力馬でG1で勝利したら絶賛です。

 

日本人騎手は1度の失敗(といえるのかも怪しいですが)で鞍上を降ろされますが

外国人騎手は失敗してもたくさん有力馬に乗せてもらえます。

もちろんそれまでの過程は無視出来ませんが、どうも日本人騎手には減点法、外国人騎手には加点法で評価しているように思えます。

そんなことで日本人騎手に積極性が生まれるわけがありません。

 

ただ、日本人騎手もこの現状をしょうがないとせず

変わる努力はしないといけません。

野中騎手や坂井騎手のように海外へ武者修行したり、

藤田菜七子騎手のように地方レースに数多く騎乗して経験を積むことは

現状を打破しようとする姿勢は感じます。

実際に少しずつ成果が出ているようにも思います。

 

 

・最後に

少しだけフォローするならば、矢作調教師は中谷騎手や坂井騎手を

積極的にレースで使っていることを知っています。

本人は日本人騎手への叱咤のつもりかもしれませんが

影響力を考えて欲しかったです。

 

意外と競馬ファンは言動を見ています。

それは共同会見もそうですし、新聞の厩舎コメントも含めてです。

 

競馬界は昔ながらのムラ社会のようですが、そろそろ変わらなければならない時が来ています。