RM_horseの競馬コラム

競馬についてあれこれ書きます。

高速馬場に関する私見と考察

 

11/30、12/1の開催は、

中山と阪神で2歳レコードが頻発しました。

 

 

開幕週で馬場が綺麗だったので、時計は速くなるのは当然ですが

レコードタイムが次々に更新されることに戸惑う競馬ファンが多かったようです。

これを受けて「高速馬場で日本は世界から取り残される」とか

「そんなに速いタイムで走ったら馬が壊れる」などといった声が多いです。

 

近年の高速馬場の傾向は競馬ファンだけでなく、一部の競馬評論家や

さらに牧場や厩舎関係者、騎手までも苦言を呈することを目にします。

 

しきりに議論されているこの問題ですが、私の現時点での考えを記します。

今後新しい事実が出てきた時には、もちろん考えを改めます。

 

これから書くことは、事実や統計的データが明らかにされている部分と

私の想像の部分を分けて示します。

 

 

・高速馬場で故障率は増加していない(事実)

馬場と故障率の因果関係については、JRA競走馬総合研究所および競馬評論家の小島友実氏が

統計データを示しています。

その著書を持っていないのですが、以下のブログで要点が記されています。

 

今から20年前の芝レースでの故障率は約2%というデータがあります。

雑な計算ですが、3レースに1頭くらいの割合で故障馬が出ていたことになります。

尚、当時のダートでは1.4%程度となっています。

 

それから20年、当時より早いタイムが出るようになっている現在、芝コースでの故障率は実は1%強程度となっています。

 

そう、実はかつてのダートよりも低い故障率にまで低下してきています。

 

この時点で早いタイムが出る馬場だからといってイコール故障に結びつくということはないことがはっきりしています。

むしろ、この故障率に関してはダートがメインの北米の方が高い傾向が出ています。

 

 

もちろん、医療技術の向上でレースで故障する前に問題を発見することが出来たり、調教技術の向上などによって故障に結びつくことが少なくなってきていることは影響しているのかもしれませんが、それを加味しても芝コースでの故障率はダートコース以上に少なくなってきており、単に早いタイムが出る馬場が故障させているわけではないことがはっきりとしています。

 

結論から言うとJRAの芝馬場は実はそれほど硬くはありません。

馬場の硬さと言うのは硬度計で計測していたりもするのですが、近年の馬場の硬さと言うのは80~90程度の硬さの数値となっているのですが、この数値はヨーロッパの競馬場と同じくらいの水準で、イギリスダービーが行われるエプソム競馬場と同じくらいだそうです。

昔はこの硬度が120くらいの数値だったとのことで、むしろ馬場自体は柔らかくなってきているんですね。

 JRAの馬場管理担当者もこのあたりはかなり意識しているようで、馬場が硬くなると故障に繋がる可能性は多少なりともありますし、そこに付け込まれて叩かれてしまうのは明らかなため、可能な限り硬くなり過ぎることのないように管理しているとの発言もあります。

 

高速馬場と故障 - 遊爺札幌競馬塾より引用。

 

それでもなお高速馬場が馬を壊すというのであれば、

しっかりと反証データを示した上で反論する必要があります。

例えばこんな反論をよく目にします

 

JRAが示しているデータは、レースでの直接的な故障率を示しているだけで

レースでの疲労による間接的な故障を考慮しておらず、都合の良いデータである。

高速馬場で馬の故障が増えているのは1頭のレースの出走数が減っていることからも明らか。」

 

まず、長い年月をかけてデータを蓄積した人に対して、

反証データを示さずに自分の印象だけで反論をしてはいけません。

 

レースの疲労が増えたことに関して、全く根拠がありません。

タイムが速かろうが遅かろうが全力で同じ距離を走ればどちらも疲れるでしょう。

例えていいのかわかりませんが、

人間のマラソンレースも東京マラソンは開設から2016年までは

日本人男子の最高タイムは2時間10分を超えるコースでしたが

2017年にコースが変わり、日本記録が目指せる高速コースになりました。

どちらの方が疲れるというのは特に無いと思いますが。

 

1頭のレース出走数が減っているのは別の理由がありそうなので後で記します。

 

 

・なぜ高速馬場で故障が増えると考えるのか?

なぜ多くの人が高速馬場で故障のリスクが上がると考えるのか?

その理由は認知バイアスだと思います。

認知バイアスとは心理学での用語で、簡単に言えば思い込みです。

認知バイアスは大分類なので、今回の思い込みが細かく何に分類されるかは

うまく説明できませんが、何種類かのバイアスが絡んでいそうです。

(心理学専門ではないので、間違えていたら申し訳ありません)

 

まず、人は印象的な出来事があると、その出来事が広く起こると思い込みがちです。

これをハロー効果といいます。

例えば、アグネスタキオンクロフネ等に代表されるレコードの申し子のイメージがあります。

両馬ともレコードタイムを叩き出す名馬でしたが、脚の故障で早期引退に追い込まれました。

これにより時計が速い=脚が危険という構図になっているのではないでしょうか?

それは間違いではない可能性はありますが、それだけで結論付けられるものではありません。

 

今年のヴィクトリアマイルレコードタイムで勝利したノームコアが骨折したり

日本ダービーのレースレコードタイムを更新したロジャーバローズが屈腱炎で引退した時、

それ見たことかと高速馬場への批判が相次ぎましたが、

少し考えれば故障していない馬の方が多いのを無視しています。

 

そもそも上記の引用の通り、今はより時計のかかるダートの方が故障率が高い状況。

脚元に不安がある馬を芝で走らせずにダートで走らせている側面があるにしても

高速馬場で故障リスクが上がるなら、芝の方がより故障が多くならないとおかしいです。

 

また、前述のJRA競走馬総合研究所や小島氏が示しているデータがあることを調べもせずに

高速馬場への批判をしたり、わかっていてJRAが都合のいいように言っているだけで信用しない

というのは、確証バイアスが働いています。

確証バイアスも認知バイアスの一つで、簡単に言えば自分の都合のいい情報しか集めず、

反対の情報を無視したり集めようとしないことです。

 

このように、なぜ高速馬場で故障が増えると考えてしまうのか、については

思い込みの要素が大きいと考えます。

もちろん、しっかり根拠があればいいですが、

高速馬場によって故障率は増加していないというデータに反証できる根拠を

私はまだ見たことがありません。

 

もちろん、特に有力馬が故障により道半ばで引退してしまうことを良しとはしません。

しかし、競馬場でのレースだけに原因を求めるのは短絡的です。

 

余談ですが、以上の2つの認知バイアスは、案外競馬予想にも通ずると思います。

自分は勘で馬券を買いたいんだ!という人は全く問題ありませんが

データを重視すると考えている人が、ハロー効果や確証バイアスの影響を受けていないか

見つめ直すのも大事だと思います。(自戒の意味も込めて書きました)

 

 

・出走レースが少ないのはレベル向上の表れでは?(推察)

では、特にG1級の馬の出走するレースが少なくなってきていることに対して、

昔と比べて馬が貧弱だとか(特にディープインパクト産駒は言われがちです)、

故障のリスクが大きいと思い慎重になっているからだとか言われることもしばしばあります。

後者については一定の検討の余地はありそうですが、前者は全く違う考えを持っています。

 

ここからは私の推察になりますので、違う考えを持つ人も多いと思います。

先ほどの認知バイアスの話も推察といえば推察になりますが、

いろいろな見方をしてもそうとしか思えませんでした。

ですが以下は完全に想像になりますので私が間違えている可能性も大いにあります。

 

G1級の馬の出走数が昔と比べて少なくなってきているのは、

昔よりもレースレベルが上がり、高いレベルの仕上がりでなければ

G1で好走出来なくなったためだと考えています。

 

また人間に例えるのはあまりよくないかもしれませんが、

野球でも投手の登板について、昔は3連投4連投当たり前で

今の先発投手は中5日6日と貧弱だとよく言われていた時期がありました。

(近年はそんなことを言う人はごく一部に限られます)

ですが、本当にそうなのでしょうか?

 

人間の身体能力は陸上の世界記録を見てわかる通り、

どんどん向上していっているはずです。

決して貧弱になったわけではありません。

 

では、どうして今の先発投手は間隔を空けるのか?

それは故障のリスク軽減の他にパフォーマンスの面があるのではないでしょうか?

先発投手よりもリリーフ投手の方が球速が速いことからわかるように

投手はたくさんの投球をすればするほど力を加減しないといけません。

間隔を空けることによって良いパフォーマンスを出しているのです。

 

乱暴な言い方になりますが、昔は連投により加減した投球でも抑えられるくらい

打者のレベルが低かったということです。(バット等の道具も込みです)

 

同じことが競馬の世界でも言えるのではないでしょうか?

レベルが底上げされた現代競馬では、G1で勝負するには間隔をあけて

仕上がりを万全にしないといけないのではないでしょうか?

特にここ3年くらいは、過去の好走馬のローテーションがあまり当てにならないほど

長期の休み明けの馬の激走が多々見られます。

それはお休みだけでなく、外厩での鍛錬も積んでいるからです。

 

 

外厩ブラックボックス状態(未確認要素)

強い馬の故障については外厩での影響が未確認だと思います。

 

トレセンや競馬場は割と行われていることがオープンですが

今は外厩で過ごす時間の方が長い馬が多いです。

特に重賞で勝負できる馬、その中でもさらにノーザンファーム系の有力馬は

ほとんど外厩で調整されています。

ここで何が行われていて、どういう路盤なのかはよくわかりません。

 

競馬場での1回のレースでの影響を考えるよりも

長く過ごしている外厩での影響を考える方が自然ではないでしょうか?

もちろん影響があるかどうかすらわかりませんが、ブラックボックス外厩には原因は無く、

馬場状態や統計データをオープンにしているJRAの責任と批判するのは

論理的ではないと思います。

 

別に外厩が有力馬の故障リスクを高めていると断言したいわけではありません

ただ、何も検証されていない要素なので、ここを無視して

故障を高速馬場のせいと断定するのはおかしいという話です。

 

 

・高速馬場の何がいけないの?

そもそも高速馬場になることがなぜ悪いと思うのでしょうか?

故障リスクが上がると気にしている人については、

認知バイアスに陥っていることは前述の通りですが、

あとは欧州の馬場とかけ離れてしまうという意見です。

 

欧州の馬場とかけ離れるという意見の見解については下記のコラムで書いたことがあります。

そろそろ欧州コンプレックスやめませんか? - RM_horseの競馬コラム

 

ここでは要点だけにしますが、

◾️芝は植物であり、その地域で土壌も違うので馬場が違って当たり前。

  一口に欧州と言っても、例えばイギリスとフランスでは馬場も違う。

◾️日本は路盤改修や馬場状態維持の努力をしている。

  欧州が日本のように速く走れるように工夫すべきなのかもしれない。

◾️日本と同様に、欧州も以前より馬場が変化している可能性も考えるべき。気候も変わっている。

◾️日本だけがガラパゴス化しているわけではなく、統一基準が無いのだから全世界ガラパゴス

  例えばダートに偏ったアメリカもガラパゴスと言うのか?

 

要は欧州コンプレックスなだけだと思っています。

私は競馬歴が浅いため、日本の競馬がまだ発展途上であった頃を知りません。

なので日本の競馬が総合的に見て世界一だと思ってます。

 

例えばフランスでは何日も前に降った雨がいつまでも残ってずっと重馬場でレースをしています。

それではレースのたびにボコボコになってしまいますので、馬にいいとは思えません。

さらにラビット(ペースメーカー)が横行し、G1レースでも相手関係で簡単に回避して

4頭立てのような極端な小頭数レースになることもしばしばある欧州競馬が面白いとは感じません。

実際に売上高も日本が世界一です。

だからこそ路盤改修や馬場状態の維持に費用や人員を注ぎ込むことができるのです。

 

暴論かもしれませんが、欧州の競馬は経済性を高めて日本に近づけるように

頑張ってくださいと言えるくらいになっているのではないでしょうか?

 

少し話からそれましたが、なぜ高速馬場がいけないのでしょうか?

レコードは時代に合わせて更新されるものですし、

ペースによってもタイムは変わりますから、

レコードタイムを持っている馬イコール1番強い馬ではないのはわかるでしょう。

別にそれは今に始まったことではなく、昔からそういうものでした。

 

先日阪神2000mの2歳レコードが更新されましたが、だからといって

従来のレコードを持っていたアグネスタキオンの価値が下がるわけではありません。

馬や調教技術も進化しますから、20年近くもレコードが更新されなかったことを褒めるべきでしょう。

別に毎年レコードが更新されても違和感はありません。

 

下記の記事もありますので、ご参照ください。

スミヨン騎手のコメントに注目です。

“JCに外国馬不在”の異常事態。理由は日本の高速馬場なのか?(Number Web) - Yahoo!ニュース

※これを見てこのコラムを書いたわけではなく、執筆後にこの記事を知りました。

 

 

・枠順の有利不利が大きくなっている?

ただし、特に東京競馬場枠順による有利不利がつきやすくなったかもしれません。

この辺は調査の余地ありです。

 

これまで高速馬場について書いてきましたが、

その要因については、均一で走りやすい馬場を目指した結果だとJRAは述べています。

それは馬場の内側と外側(横幅方向)のコンディションにも影響しています。

 

従来は、開幕週は内ラチ沿いの芝も綺麗なので内枠有利というのはありましたが

開催が進めば内側も荒れてきて走りにくくなり、徐々に好走しやすい進路が

外側に寄っていき、最終週は逃げ馬も内ラチ沿いを避けて走ることになりました。

(夏の新潟や福島は今もこの傾向だと思います。)

そのため、開催後半は内側に仮柵が設置されて横幅が狭くなる競馬場もあります。

 

ですが今は週中での馬場の手入れ技術が向上したのか、人員を増やしたのか、

両方なのかはわかりませんが、開催後半でも内ラチ沿いにいる馬が伸びてくるシーンを見ます。

特に東京競馬場でよく見る気がします。

 

例えば雨が降り続けて不良馬場だった11/23の午後のレースは比較的外枠有利でしたが、

東京競馬場は水はけも異常なほどいいので、ずっと降り続けた雨が

翌11/24の開催直前に上がった後、あっという間に乾いて

その日の芝のレースは内枠の馬ばかり馬券に絡みました。

ジャパンカップも馬番5→1→2の決着です。

しかもこの開催は最終週です。

 

実際のところどうなのか、簡易的ではありますが重賞レースで調べてみました。

今年の東京競馬場の芝の重賞レースの内、12頭立て以上のレースの

1〜3着の馬番を抽出しました。

 

東京新聞杯 261(15頭立て)

フローラS  429(18頭立て)

青葉賞 235(16頭立て)

NHKマイルC  17→18→10(18頭立て)

京王杯SC  9→76(16頭立て)

ヴィクトリアマイル 493(18頭立て)

オークス 13→10→2(18頭立て)

日本ダービー 17→13(18頭立て)

安田記念 52→14(16頭立て)

エプソムC  9→64(14頭立て)

府中牝馬S  86→15(16頭立て)

富士S  16→92(18頭立て)

天皇賞・秋 2→9→5(16頭立て)

アルゼンチン共和国杯 7→21(13頭立て)

ジャパンカップ 512(15頭立て)

 

出走頭数の半分以下の馬番は赤文字にしました。

ぱっと見では赤字が多いように見えますが、サンプルが足りないですし

実力なども反映していないのでこの時点では何とも言えないです。

また、NHKマイルカップオークスは外枠決着です。

 

もし、仮に内枠が有利すぎてレースとして不公平であれば

コースレイアウト等、考えなければいけないことはあるかもしれません。

コース形状も馬場の保持技術が上がる前に設計されているはずなので、

内側が以前より綺麗になって内枠が有利になっても不思議ではありません。

 

 

・まとめ

長々と書いてきましたが、私見をまとめると以下の通りです。

 

◾️高速馬場で故障が増える根拠は示されておらず、むしろ故障率は昔より減少している。

  反論があれば具体的なデータで示すべき。

◾️高速馬場で故障が増えると考えている人は認知バイアスに陥っている。

◾️昔より1頭の出走レース数が減っているのはレベルの底上げの証ではないか?

◾️外厩で何が行われているのか全くわからないのに、

  有力馬の故障を競馬場でのレースにだけ原因を求めるのは変。

◾️高速馬場の何がいけないのかわからない。

  欧州とのギャップを指摘する人は単なるコンプレックスでは?

◾️ただし馬場保持技術向上に伴い、内枠が有利になりすぎる可能性については検証が必要。

 

あくまで私個人の意見ですし、今後新たな事実が判明すればひっくり返ることもありますが

今のところは多くの人が考える意見とは違う見方をしています。

この意見が完全に正しいと思っているわけではありませんが、

条件反射的に高速馬場=悪と決めつけた意見に一石投じたい気持ちです。

 

 

長文のコラムになりましたが、読んでくださってありがとうございます。